文教向けIT環境構築サービス 導入事例 横浜国立大学・宇都宮大学様

横浜国立大学・宇都宮大学様

お客様の声

「国立大学の協調設計による業務継続システムを、ニッセイコムとともに導入しました」

横浜国立大学と宇都宮大学は、かねてより国立大学間での業務継続システムの検討、設計を進めてきましたが、この度、先進事例となる「IT-BCP基幹システム」を構築しました。その経緯や導入に尽力したニッセイコムの評価などについて詳しく伺いました。


〔写真左より〕
弊社:SE 岡光真哉、宇都宮大学:手塚孝男氏、三原義樹氏、永井明氏、 横浜国立大学:仁村俊明氏、小林恭平氏、弊社:営業 西野直樹、中村普光

導入の背景・目的

大学情報戦略についてのこれまでの取り組み

 

— はじめに、これまで両大学で進められてきた大学情報戦略についての取り組みについて教えていただけますか。

 

私たちの大学情報戦略に関する協調的取り組みは、2009年に遡ります。
両大学は、大学情報資産について共通の目的意識・危機意識を持っていました。それは、大学情報資産が重要な経営資源であるとの認識のもと、情報資産をより確実にそして能動的に保護することにより、学術研究や教育活動の中断を防ぎ、事業の継続性を高め、情報利活用のさらなる促進を図っていかなければいけないということです。


具体的には2009年10月に、両大学間における大学情報資産の連携保護体制の構築に向けた検討が始まりました。2010年3月には双方の大学に試験的システムを導入し、ネットワークを通じた相互連携の実証実験をスタートさせました。


「データを守る」ではなく、「業務継続を守る」という観点でのシステム作りが求められていました

実証実験の相互連携の焦点は、やはり災害時に起こりうるデータ消失を避けるための「データバックアップ」でした。 しかし、BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)の観点からは、それだけ、つまりデータの遠隔地への複製だけでは不十分であることは当初からの検討課題でした。


当然ですが、システム損壊にも対応した事業継続計画の策定において必要となるものは「データ」と「利用環境」の保護です。もちろん、その他にも体制、制度や訓練なども重要な要素です。これらがバランスよく形成されることによって円滑な復旧が図られ、事業継続性は向上します。


私たちは「災害が起こっても、翌日には許容限界以上の業務を再開できる」ための方式を模索し、次の項目を実現する業務継続システム「IT-BCP基幹システム」を構築することを目標としました。

  • 大学の「データ」並びに「それを利用するための業務システム環境」を遠隔地にある互いの大学に設定した設備(ストレージ及びサーバ)に保管し、定期更新する。
  • 災害によって自大学の業務システムが損壊した場合、他方の大学に更新保管していたデータと業務システムを稼働させることにより、早期の機能復旧を図る。

このシステムの実現イメージは下図のとおりです。

「IT-BCP基幹システム」実現イメージ

「IT-BCP基幹システム」実現イメージ


このような仕組みを創り上げ運用可能な状態にするためには、機械的なシステムのみならず、運用の協力体制が重要であり、相互協力における制度面での検討も必要になりました。


東日本大震災を経験し、情報資産のさらなる重要性を認識した私たちは、2012年4月に、情報戦略の協調に関する協定を締結しました。この協定に基づき、次段階のシステム策定を進めました。

 

— このような取り組みにおいては、連携する両大学間の「相性」のようなものは重要なのでしょうか。

 

はい、もちろん大切な要素だと考えます。
横浜国立大学と宇都宮大学の関係者は、以下のような理由で似ていると言いますか、その類似の方向性を感じていますし、皆が前向きに議論して行動しています。そのことにとても感謝しています。


<理由1:同一のビジョン>
上述のとおり、私たちは大学の情報資産について共通の目的意識・危機意識を持っていました。この部分で差異が生じていたら連携は難しいと思います。


<理由2:距離が適度に離れている>
横浜国立大学と宇都宮大学のキャンパスは100km以上離れており、同時被災する可能性は高くはなく、業務システムやデータのバックアップ先として適切であると考えました。


<理由3:距離が適度に近い>
理由2と相反するようですが、距離が離れ過ぎていないことも大切だと考えました。種々の事項を模索していくなか、やはり顔を合わせて検討をしたいことも多く、もし離れ過ぎていると、打合せが思うようにこなせず、十分に情報やノウハウの共有を行うことが難しくなりがちです。

IT-BCP基幹システムの重要な要件

 

— IT-BCP基幹システムの要件策定はいつ頃から進めていたのでしょうか。

 

2012年4月の協定締結後から、同年12月の共同調達公示に向けて具体的なシステム要件を洗い出していきました。それらの要件項目が、入札に参加する各ベンダーに求める要件や選定の際の評価項目へと反映されました。

 

— どのような要件項目があったのでしょうか。

 

要件は多岐多数にわたります。ここで全てをお伝えする事はできないので、特に重要だと考えていた4点について説明します。


〔重要項目1:TCO (Total Cost of Ownership)〕


時間が経つにつれてバックアップデータは増えていきます。たとえば、ハードウェアや構築費用などの初期コストを抑えても、その後のデータ通信の効率が落ちてしまうと運用コストが高くなってしまうことも考えられます。長期スパンでのコストを最適化できるような提案を求めていました。


業務再開までのステップ数をどれだけ少なくできるか、各ベンダーの工夫を期待していました

〔重要項目2:業務再開のためのステップ数〕


災害が起きて自大学の業務システムが使えなくなった場合、このIT-BCP基幹システムを使ってバックアップされていたデータとシステムを立ち上げ、業務を再開することになります。


迅速な業務再開のためには、必要なステップ ~具体的には、レプリケーションを停止した上でのIPアドレスやアプリケーションの設定変更、直近データのリストアなど~ はできるだけ少なくしたいと考えていました。


〔重要項目3:災害復旧後についての考察〕


すみやかに非常時用システムを立ち上げ、業務を再開することができたとします。そのシステムは「その後ずっと使うシステム」ではありません。損壊した既存の環境が復旧したら、今度はそちらに再び移し戻す作業が発生します。ベンダーがその点をどのように考え、提案にどのような形で盛り込まれているかを注意していました。


〔重要項目4:セキュリティ〕


貴重な大学情報資産が、物理的に別の大学のキャンパスの中に保管されることになりますから、それをどのように守っていくかは極めて重要なポイントになります。
また宇都宮大学では、ISO27001(情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際規格)の認証を取得し、5年間にわたるBCP訓練の実績も有します。そのため、IT-BCP基幹システムについても規格に適合したレベルを求めていました。

 

— 両大学で検討を進めていく中で、意見が食い違ってすり合わせに苦労されたり、妥協せざるを得なかった要件項目があったりしたのでしょうか。

 

私たちはもう何年も話し合ってきましたので、すり合わせに苦労するような事はありませんでした。


ただ1点、これは食い違いではないのですが、初年度での導入にはサーバ容量に制限がありました。と言うよりも、TCOを考慮し、段階的に拡張できることが必須でした。そこで、一度に全ての業務システムを対象にするのではなく、年度を分けて導入対象範囲を拡げていくことにしました。


情報の重要度や既存の各システムをリプレースするタイミングなどを考慮して、財務会計システムからIT-BCP基幹システムによるバックアップ体制作りを始めることにしました。

選定ポイント

ニッセイコムの活動についての評価

 

— 実際に導入を始める前の段階で、ニッセイコムに対してはどのような期待や不安を持たれていましたか。

 

ニッセイコムは仮想化に関する経験も豊富で、国立大のシステム構築についても実績がありましたので、技術的には大丈夫だろうと信用していました。あえて挙げるとしたらセキュリティでしょうか。上述のとおり厳しい情報セキュリティを、単一の組織ではなく2つの組織にまたがる形で実現しなくてはいけませんので、そこをどのような次元で考えることができるかという懸念と期待がありました。


また、私たちが求めていたのは「モノの提案」ではなく業務継続のための「機能の提案」でした。ハードを用意してきちんと繋げればOKではなく、いざ使うとなった時のことまで理解してくれるか。創造力と組織力をフルに働かせて仕事をしていただけることを期待していました。

 

— では、実際のニッセイコムの活動はいかがでしたでしょうか。

 

しっかりとした工程表を作成し、着実に作業を進めてくれました。納期は3月末でしたので、わずか2~3ヶ月という短期間でよくやってくれたと思います。


このプロジェクトは同種の事例が少なく、国立大学間では極めて先進的な事業です。ですから実際にシステム構築を進めていく中で現出した詳細課題については、両大学とニッセイコムでとことん追求し、共に解決しました。


当初心配していたセキュリティ面では、やはり苦労されていました。ニッセイコムのエンジニアに対して厳しい指摘をしたこともありました。しかし彼らはそこで音を上げることなく、複数の改善案を示し、解決に向けて奮闘してくれました。


無事、2013年4月からIT-BCPシステムの運用がスタートしました。
4月25日に始動式典を開催し、本格的に大学間連携事業が動き出しました。

今後の展望

 

— 今後の予定を教えてください。

 

先述のとおり、両大学とも会計・給与・教務といった各分野の業務システム全てにこの仕組みを導入する作業を進めていきます。
また、8月末にストレステストを実施する予定です。実際に横浜国立大学側の電源を落として業務再開の訓練を行います。


「IT-BCP基幹システム」の完成はあくまでもスタートです。引き続き両大学とニッセイコムが協力しながら経験を積み重ね、大規模災害に強い情報基盤を持つ大学作りを進めて参ります。そして、得られた知見は積極的に外部に公開、発信することに努めたいと思っています。

 

— 最後に、ニッセイコムへのメッセージをお願いします。

 

厳しい条件や期間の中で、IT-BCP基幹システムの稼働にこぎつけることができたのはニッセイコム様のおかげです。とても信頼できる皆様だと再認識しました。今後も、運用や点検、改善の検討などを通じて、更に信頼関係を深めていければと期待しております。よろしくお願いします。


お忙しい中、ありがとうございました。

お客様について

横浜国立大学

所在地 神奈川県横浜市
開学年 1949年
学生数 大学院生2,561人/学部生7,471人(2013年5月1日現在)
学長 鈴木 邦雄
学部 教育人間科学部、経済学部、経営学部、理工学部
Webサイト 横浜国立大学
横浜国立大学様

宇都宮大学

所在地 栃木県宇都宮市
開学年 1949年
学生数 大学院生815人/学部生4,225人(2013年5月1日現在)
学長 進村 武男
学部 国際学部、教育学部、工学部、農学部
Webサイト 宇都宮大学

2013年8月取材。
このページの情報は取材日時点のものです。
現時点では変更になっている場合もありますのでご了承ください。

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