従業員貸付制度を導入する目的と重要性

2026年1月15日
従業員の生活をサポートし、企業の魅力を向上させる取り組みとして「従業員貸付制度」が注目を集めています。本記事では、その概要やメリット・デメリット、法的リスク、税務上の取り扱いなど、制度導入にあたって知っておきたいポイントを詳しく解説します。
最近では、緊急の出費や生活資金の不足といった従業員の悩みに対応するため、福利厚生として幅広く検討される機会が増えています。このような制度を通じて、企業は従業員の生活の安定をサポートし、結果として職場環境の改善や生産性の向上を期待できます。
一方で、法的リスクや税務上の論点もあるため、導入にあたってはさまざまな側面を総合的に検討することが大切です。本記事を参考に、自社の制度設計や運用管理に活かしていただければ幸いです。
目次
3.2. 従業員側のメリット:急な出費の支援とストレス軽減 4.1. 会社側のリスク:貸倒れと資金繰り
4.2. 従業員側の懸念:返済負担や信用リスク 5.1. 貸付金額・貸付期間・利息設定の基本
5.2. 従業員貸付制度規程の整備 6.1. 労使協定の締結と相殺合意書の必要性
6.2. 賃金全額払いの原則と違反時の罰則 7.1. 連帯保証人に対する請求の手順 9.1. 制度設計から施行、従業員への周知まで
9.2. 導入後のモニタリングとトラブル対応 10.1. 無利息・低利貸付が給与課税となるケース
10.2. 税法上の根拠と注意点
1. 従業員貸付制度とは何か

まずは従業員貸付制度がどのような仕組みか、その全体像を把握しましょう。従業員貸付制度は、企業が従業員に対して一定額を低金利または無利息で貸し付ける制度を指します。
給与の前払いとは異なり、この貸し付けの原資は企業が提供し、返済は従業員の給与や賞与から差し引かれるか、個別に返済計画を設定する形が一般的です。従業員にとっては急な出費や予想外の支出に対処する手段となり、企業側も福利厚生や従業員の経済的安定を支援できるメリットがあります。
ただし、企業が貸付を行う以上、返済不能リスクや貸倒れリスクを完全になくすことはできません。適切な規程の整備や合意書の作成、利息の設定を通じてリスクを最小限に抑えることが重要です。また、労働基準法や利息制限法などの関連法令を把握しておくことで、将来的なトラブルを回避しやすくなります。
2. 「従業員貸付制度」と「前借り」の違い

似たような制度である「前借り」との違いを押さえておくことも重要です。企業が従業員の金銭的な緊急需要に応える手段として「従業員貸付制度」と「前借り」が挙げられます。
一見似たような制度ですが、前借りは将来支払われる給与を先に受け取る仕組みであり、貸付ではありません。したがって、前借りの場合は従業員の勤怠や給与計算に影響を及ぼしやすい点に注意が必要です。
一方で、従業員貸付制度では会社が従業員に対し新たに資金を融通する形となります。そのため、前借り制度に比べて資金繰りや法的リスクの範囲が異なり、返済が滞った場合の対応方法も変わってきます。自社に適した制度を導入するには、両者の特徴を正しく理解し、それぞれのメリットとデメリットを考慮しながら判断することが重要です。
2.1. 前借り制度の概要と双方における法的リスク
前借り制度は労働基準法第25条の「非常時の前渡し」に該当する場合もあるため、その要件を確認しながら運用する必要があります。前借りは貸付とは異なり、金利や遅延損害金の設定がないため、返済時には賃金の清算とされます。
ただし、十分な合意書の作成や賃金全額支払いの原則を守らないと、労基法違反に問われる可能性があるため、慎重な運用が必要です。
一方、従業員貸付制度では会社と従業員間で金銭消費貸借契約を結ぶため、契約書の不備や過度な金利設定が利息制限法や出資法に抵触するリスクがあります。
このため、従業員とのトラブルにつながる恐れがあります。いずれの制度においても、労使間のコミュニケーション不足や法的手続きの不徹底が重大なリスク要因となるため、注意が必要です。
3. 従業員貸付制度のメリット

企業と従業員の双方にとって、有益な側面が複数存在します。従業員貸付制度を導入することは、企業にとって従業員の退職防止や採用力の向上といったメリットをもたらします。
従業員が不意の出費に対応できる環境を整えることで、職場への安心感とロイヤルティが高まることが期待されます。
また、企業は従業員の金銭的ストレスを軽減することで生産性やモチベーションの維持につなげやすくなります。従業員にとっては、急な医療費や冠婚葬祭などの支出に迅速に対応できる点が大きな利点です。
消費者金融などを利用するよりも低利または無利息で借り入れできる可能性が高く、高額な利息負担を避けられるというメリットも見逃せません。結果的に、従業員の生活の安定が図られ、集中して業務に取り組める環境づくりが期待できます。
3.1. 企業側のメリット:雇用安定と労働意欲向上
企業が従業員を積極的にサポートする姿勢を示すことで、従業員満足度が向上し、結果として離職率を下げる効果が期待されます。
特に金融機関からの借り入れが難しい従業員にとっては、企業からの貸付が大きな支援となり、安心して長期的に働く動機づけになります。これにより、企業全体の生産性が高まるほか、従業員間の信頼関係も強化されるでしょう。
さらに、福利厚生が充実している企業は、採用市場でのアピールポイントが増え、人材確保にも良い影響があります。金銭面でのサポートは、給与以外の形で従業員の生活を支える取り組みとして評価されやすく、企業イメージの向上にもつながります。
3.2. 従業員側のメリット:急な出費の支援とストレス軽減
従業員は、突発的な医療費や生活費の一時的な不足に対応することで、経済的不安からくるストレスを大きく軽減できます。消費者金融の高金利ローンやクレジットカードのリボ払いに依存せずに済むため、個人の負債リスクを低減できる点は大きな魅力です。金銭的な安心感が得られることで、業務への集中がしやすくなり、パフォーマンスの向上にも寄与します。
また、企業が設定する利息は、法律や通達を考慮しており、市場金利と比べて低く設定されている場合があります。そのため、大きな金利負担を感じることなく返済できる点もメリットです。
ただし、返済期間や返済方法をしっかりと把握しておかないと、返済計画のずれからトラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
4. 従業員貸付制度のデメリット

導入にはリスクもあるため、企業と従業員の双方が注意を払う必要があります。
従業員貸付制度はメリットがある一方で、会社側には貸付金が回収できない貸倒れリスクや資金繰りの負担が発生する可能性があります。貸し付ける金額が大きい場合や返済期間が長期にわたる場合、会社のキャッシュフローに大きな影響を与える恐れがあります。企業としては、財務状況やリスク許容度を踏まえた制度設計が必要です。
従業員側から見ると、会社から資金を借り入れることで心理的なプレッシャーを感じるケースもあります。返済が遅れると給与差し押さえなどの手段が取られる場合もあり、社内評価や個人信用への影響が懸念されます。制度の導入時には、従業員と企業の双方がリスクを十分に理解し、対策を講じることが重要です。
4.1. 会社側のリスク:貸倒れと資金繰り
貸し付けた資金が返済されずに貸倒れになると、企業の収益や資金計画に大きな影響を与える恐れがあります。さらに、複数の従業員に同時に貸し付けを行う場合には、貸付総額が増え、キャッシュフローが悪化して経営に支障をきたす可能性があります。
こうしたリスクを回避するために、貸付の際には審査や連帯保証などの仕組みを整え、過度な貸し付けを防止する企業の努力が必要となります。
また、会社側が金融機関から資金を借り入れてまで従業員に貸し付けるケースは慎重に判断しなければなりません。企業本来の事業活動に支障が出るほどの資金繰りを行うのは、経営上の大きなリスクを伴うからです。
4.2. 従業員側の懸念:返済負担や信用リスク
従業員が返済義務を負うことは、一般的なローンと同様に大きなプレッシャーとなり得ます。
特に、返済が滞った場合には給与や退職金からの天引き、さらには差し押さえの可能性もありますので、結果的に社内評価が下がるリスクも否めません。こうした懸念は、従業員が制度を利用する際のハードルとなり得ます。
また、従業員貸付制度の利用実績は信用情報機関に登録されないことが多いものの、社内での信用問題や評価に影響する可能性もあります。返済計画や利用目的を明確にし、必要に応じて相談窓口を設けるなど、企業側のサポート体制が重要です。
5. 従業員貸付制度の利用条件と対象者

制度の対象や利用可能な従業員の範囲、および貸付条件を確認します。企業によっては、正社員のみを対象とするケースや、一定の勤続年数を条件とする場合があります。
また、貸付の理由や目的を問いかける企業もあり、緊急性が高い医療費や車両費などに限定する場合も少なくありません。利用申請時には、担当部署による審査や返済能力の確認が行われることがあり、社内規程に基づいた運用がなされます。貸付金額は企業の財務状況や方針によって上限が定められることが多く、利率も市場金利や法定利息を考慮して決められます。
一般的には、無利息や低金利が魅力とされますが、国税庁の通達などで定められた一定水準を下回るとみなし給与になる可能性があるため、企業は慎重に設定する必要があります。
5.1. 貸付金額・貸付期間・利息設定の基本
貸付金額は10万円から100万円程度に定めている企業が多いですが、企業の財政状況に応じて柔軟に変更されることがあります。
貸付期間についても、1年以内から数年にわたるものまで幅広く設定されており、返済計画の立てやすさや従業員の負担度合いを考慮して決定するのが望ましいです。利率は利息制限法の範囲内で設定する必要があり、無利息を選択した場合にはみなし給与として課税されるリスクをチェックする必要があります。
遅延損害金を設定する際は、出資法による上限金利を超えないよう注意しなければなりません。企業と従業員双方にとって負担が過度に大きくならないよう、運用ルールを定め、契約書を作成し、リスクと費用のバランスを考慮した制度とすることが重要です。
5.2. 従業員貸付制度規程の整備
従業員貸付制度を適正に運用するためには、社内規程をしっかりと整備し、周知徹底することが不可欠です。規程には、貸付金額や申請手続き、返済方法、利率、延滞時の対応などを明文化し、従業員がいつでも確認できる環境を整えましょう。
特に、申請から審査、貸付実行、返済計画の確定までのフローを明確にすることで、業務効率やトラブル防止に役立ちます。
また、規程の内容が法令や通達に準拠しているかを定期的に確認し、必要に応じて改訂することが望ましいです。社会情勢や法改正に合わせて柔軟に対応できる運営体制を築くことで、従業員貸付制度のメリットを最大限に活用し、リスクを最小限に抑えられるでしょう。
6. 給与・退職金からの天引きと相殺に関する留意点

貸付金の回収方法としての給与天引きや退職金相殺における法的留意点を確認しましょう。
従業員貸付制度の返済方法として、毎月の給与や賞与から一定額を天引きするケースが一般的です。給与天引きには従業員の書面による合意が原則とされており、給与の全額払い原則を侵さないよう労使協定の締結が必須です。退職金からの相殺も同様で、事前に相殺合意書を取り交わすことでトラブルを未然に防ぐことが重要です。
しかし、従業員が予期せぬ事情で退職したり、返済が滞ったりした場合、実際に貸付金を回収するのが難しくなる可能性もあります。相殺を行う際には、労働基準法だけでなく民法上の要件も考慮する必要があります。
6.1. 労使協定の締結と相殺合意書の必要性
給与からの天引きを合法的に行うには、従業員の明確な同意を得て労使協定を締結することが前提です。口頭のみの合意ではなく、書面で合意を残すことで、将来的なトラブルを回避できます。
加えて、退職金からの相殺を予定している場合は、事前に相殺合意書を作成し、従業員が十分理解した上で署名捺印してもらう必要があります。これは、従業員が知らないうちに賃金や退職金を差し引かれるのを避ける意義があります。企業は従業員が納得できる形で制度を説明し、不明点があれば質問できる環境を整えることが重要です。
6.2. 賃金全額払いの原則と違反時の罰則
労働基準法第24条では、賃金は全額を支払わなければならないと規定されています。
従業員貸付制度の返済を給与から天引きする際は、この原則との整合性を保つ必要があります。労使協定や書面合意がないまま天引きを行うと、賃金不払いと見なされ、労働基準法違反に問われる可能性があります。
違反が認められた場合、企業には罰則が科され、社会的信用の失墜につながるリスクがあります。従業員貸付制度を健全に活用するためには、事前に手続きを行い、法令を遵守する姿勢が求められます。
7. 連帯保証人・保証会社の活用

リスクヘッジとして、連帯保証人や保証会社の利用を検討するケースがあります。従業員貸付制度では、貸し倒れリスクを最小限に抑えるために連帯保証人を立てる場合があります。従業員が返済できなくなったとき、連帯保証人が代わりに返済義務を負うため、企業としては貸付金を容易に回収できるというメリットがあります。
ただし、連帯保証人を選定する際には慎重さが求められ、親族や親しい知人に依頼することで人間関係にトラブルが生じる可能性も考慮する必要があります。
また、保証会社を活用する方法もあり、万が一の貸し倒れ時に保証会社が返済を肩代わりしてくれる仕組みを整えれば、企業のリスクマネジメントに役立ちます。保証会社の利用には費用が発生し、従業員か企業が負担することになるため、導入前に費用対効果を比較検討することがポイントです。
7.1. 連帯保証人に対する請求の手順
連帯保証人が存在する場合、従業員が返済を滞った際には、まず当該従業員に対して支払いを促す手順を踏むことが一般的です。
それでも返済が行われないときは、連帯保証人に対して正式な請求を行い、貸付金や利息を求めます。連帯保証契約書を作成する際には、保証の範囲や返済義務に関する条項を明確に記載し、後々の紛争を避けることが重要です。
ただし、連帯保証人に請求しても支払能力がない場合には、結局貸倒れとなる可能性も否めません。企業としては、保証人の資力や信用力を十分に確認し、あわせて保証会社の利用など複数のリスクヘッジ策を検討するのが望ましいでしょう。
8. 従業員貸付制度に関する裁判例と法的リスク

従業員貸付制度をめぐる裁判例を参考に、想定される法的リスクを把握しましょう。
過去の裁判例では、給与からの天引きや退職金相殺の適法性が争点となる事例が見られます。法的には、従業員の自由な意思で締結された労使協定や合意書があれば問題ないとされる傾向にありますが、合意過程に不備がある場合、全額払いの原則に反するとして無効と判断されることもあります。企業は必ず書面による明確な合意手続きを経て、法定要件を遵守することが重要です。
また、利息の設定が利息制限法や出資法に違反していた事例や、みなし給与が適用された事例も裁判で取り上げられています。企業側が制度設計において法令を十分理解せず、管理体制が不十分であると、法的リスクを抱えることになります。導入段階で専門家に相談するなど、トラブル防止のための取り組みを怠らないようにしましょう。
9. 導入の流れと運用管理のポイント

制度を設計し、実際に運用するまでのステップを整理します。
従業員貸付制度を導入する際は、まず社内のニーズや財務状況を把握し、制度設計の方針を決定します。その後、貸付金額、期限、利息などの条件を具体的に設定し、就業規則や社内規程への反映を検討する段階へと進みます。施行前には、従業員にメリットだけでなくリスクや手続きの詳細を説明し、十分な理解を得ることが不可欠です。
運用が始まった後も、返済の進捗状況や従業員の満足度を定期的に確認するなどのフォローアップが重要です。トラブルや不正利用を防止するために、担当部署や審査窓口を明確にしておくとともに、ルール違反が疑われる事態には迅速に対処できる体制を意識しましょう。
9.1. 制度設計から施行、従業員への周知まで
制度設計を行う際には、企業の財務担当や法務担当、人事担当が連携して貸付条件や審査基準を策定します。
特に、企業のキャッシュフローに対する影響や返済滞納リスクを考慮し、必要に応じて保証人や保証会社の利用を検討すると良いでしょう。制度導入が決定した後は、従業員向けの広報資料を整備し、具体的な手続きや問い合わせ先を分かりやすく周知することが重要です。周知方法としては、イントラネットやメール、掲示板など多面的に活用し、質問があれば個別に相談できる体制を整えると安心感が高まります。
最終的には就業規則や社内規程に制度の詳細を明示し、変更点や注意事項を社内全体に十分に浸透させることを目指しましょう。
9.2. 導入後のモニタリングとトラブル対応
従業員貸付制度を開始した後は、貸付総額や返済率などのデータを定期的にモニタリングし、問題が発生する前に対策を講じることが重要です。従業員からの相談や苦情を受け付ける窓口を設けておけば、潜在的なトラブルを早期に発見し、適切なフォローアップを行いやすくなります。
特に、返済が滞りがちな従業員には早めにアプローチを行い、返済計画の見直しや相談対応を行うことでリスクを軽減できるでしょう。
万が一、労使間の認識相違や契約違反があった場合は、早急に事実確認を行い、必要に応じて労働基準監督署や法律の専門家の意見を求めることを検討しましょう。透明性の高い運用と迅速な対応策によって、従業員との信頼関係を保ち、健全な運用を続けることが可能です。
10. 税務上の取扱い:役員・使用人への貸付と国税庁No.2606

税務上の取り扱いを把握しておくことで、後々のトラブルを回避しやすくなります。
企業が役員や従業員に貸付を行う場合、税制上の留意点として無利息または低利での貸付が問題となることがあります。法律上、一定の利率を下回る場合には、その差額がみなし給与として扱われ、所得税等の課税対象となる可能性があるため、注意が必要です。特に役員貸付の場合、役員報酬との関係も検討する必要があり、法人税の面でも誤った取り扱いをすると、後々大きな税負担を招く危険性があります。
国税庁No.2606は、役員や従業員に対して会社が貸付を行った際の取り扱いを示した通達であり、具体的な判断基準や算定方法などが記載されています。制度を導入する企業は、この通達をよく確認し、公正かつ適切な利率設定を行うとともに、課税リスクを把握しておくことが重要です。
10.1. 無利息・低利貸付が給与課税となるケース
無利息または通常の利率を大きく下回る貸付を行うと、給与とみなされる可能性があります。
具体的には、国税庁が示す「適正利率」との比較により、利息の差額が従業員の給与とされ、所得税や住民税の課税対象となります。企業は貸付契約を締結する際に、この適正利率の範囲内に収めるか、差額を控除して従業員に額面給与を支給する対策が必要です。
特に高額な貸付を長期間、無利息で行う場合は差額が大きくなるため、課税リスクも高まります。事前に税理士などの専門家に相談し、適切な金利を設定することが望ましいでしょう。
10.2. 税法上の根拠と注意点
所得税法や法人税法の規定に加えて、国税庁の各種通達や裁決事例を参照することが、制度の適正運用には欠かせません。
特に、役員への貸付は役員報酬との関係で法人税の問題を招く可能性があり、一層慎重な判断が求められます。担当部署は制度導入前にこれらの法令・通達を確認し、それを社内の手続きフローや書類整備に反映させることが推奨されます。
注意点として、借入側である従業員が課税対象となるだけでなく、企業側の経理処理や申告漏れが問題視されることもあります。貸付の目的が福利厚生であっても、法的・税的側面を無視することはできません。正確な情報を収集し、制度導入時には税務リスクに対応できるだけの準備を怠らないようにしましょう。
11. まとめ:従業員貸付制度を適正に活用するために

最後に、従業員貸付制度の導入ポイントを総合的に振り返ります。
従業員貸付制度は、企業と従業員双方に大きなメリットをもたらしますが、法令遵守や財務リスク管理、税務上の配慮など、多面的に検討すべき要素があります。制度設計の段階において社内規程や契約書をしっかり整備し、導入時には労使間の合意形成をスムーズに行うことが重要です。
連帯保証や保証会社の活用を含めたリスクヘッジを図ることで、貸倒れや返済遅延のリスクを最小限に抑えることができます。
また、税務上の取り扱いに関する国税庁通達No.2606をはじめ、法令や行政通達を確認しながら適切な設定を行うことが不可欠です。従業員の生活支援と企業の生産性向上を両立させるためには、制度の運用を継続的に見直し、必要に応じて随時改善していく姿勢が求められます。
