販売管理 関連コラム卸売業が直面する「物流2026年問題」の全貌を解説

2025年11月11日


近年、物流業界ではドライバーの人手不足や労働環境の改善要請など、さまざまな課題が顕在化しています。特に2024年から始まる労働時間規制の強化は、物流業務の効率化を急務とする転換期となっています。

こうした流れに続いて2026年には、改正物流総合効率化法の施行を中心とした「物流2026年問題」が本格化します。卸売業もこの影響を大きく受ける立場であり、コスト管理や体制整備が課題として浮上しています。

本記事では、物流2026年問題の背景や法改正の概要、卸売業に求められる主な対策について分かりやすく解説します。卸売業が抱える物流2026年問題への具体的な対応策を押さえ、早期の体制強化を目指しましょう。


目次
1.1. 2024年問題から2026年問題へ至るまで
1.2. 物流総合効率化法改正のポイント
1.3. 特定荷主とCLO(物流統括責任者)の位置づけ 2.1. 卸売業が留意すべき主要改正点
2.2. 努力義務と義務化の違い 3.1. 貨物重量の届出と情報管理
3.2. CLOの選任と社内体制整備
3.3. 物流効率化の取り組み強化 4.1. コスト上昇と価格転嫁
4.2. ドライバー不足の深刻化
4.3. 出荷頻度・物流ネットワークの見直し 5.1. ホワイト物流推進運動の概要
5.2. 流通業務総合効率化法の改正内容
5.3. 改善基準告示とこれからの課題 6.1. 共同配送・モーダルシフトの活用
6.2. AI・IoTによる物流最適化
6.3. 労働環境の改善と働き方改革

1. 2026年問題とは? その背景と関連法制度


まずは、2026年問題がなぜ生じているのか、背景や関連法制度のポイントを整理してみましょう。

近年の輸送需要増加とドライバー不足は、既存の物流体制の脆弱性を顕在化させています。2024年問題として知られるドライバーの労働時間上限の適用だけでなく、業界全体を持続可能にするための規制・施策が一挙に整備されつつあるのが特徴です。これに伴い、卸売業を含む荷主は物流の効率化とコスト管理の両面で対策を急がなければなりません。

2026年問題の根本には、ただ規制を守るだけでなく労働環境の改善や環境負荷低減を含めた長期的な取り組みが求められるという点があります。特に年間9万トン以上の貨物を取り扱う企業(特定荷主)は、新法や改正内容に沿った対応義務が強化されるため、物流統括責任者(CLO)の選任など抜本的な体制づくりが焦点となります。

関連する法律は、主に物流総合効率化法や貨物自動車運送事業法などです。運送業者だけでなく、自社が取り扱う物流全体の最適化や持続可能な仕組みづくりを意識して、今後の施行スケジュールに合わせた計画策定が不可欠になっています。

1.1. 2024年問題から2026年問題へ至るまで

2024年問題とは、ドライバーの残業時間に上限が設けられることによって輸送能力の縮小や運送コストの増加が懸念される課題です。従来ドライバーの負担が大きかった物流現場では荷待ち時間の削減や荷役の効率化が求められてきましたが、現実には抜本的な解決策が進んでいません。

その流れを踏まえ、業界全体の改革を促す動きが2026年問題へと発展しました。具体的には、規制項目の拡大だけでなく、「特定荷主」を対象にした貨物重量の届出義務やCLOの選任義務の強化によって、荷主単位での取り組みをさらに推進しようとしています。

こうした法改正の背景には、国の施策として物流の効率化と働き方改革を同時に進めようとする意図があります。荷主と運送業者が協力し、今まで曖昧だった「誰がどこまで責任を負うか」を明確化する段階に達しているのです。

1.2. 物流総合効率化法改正のポイント

物流総合効率化法の改正によって、特定荷主には適正な貨物量の管理や物流効率化の計画策定が求められます。これまで運送事業者に大きな負担がかかっていましたが、荷主側に責任と義務が移行することで物流全体の最適化を進める狙いがあります。

改正の柱には、貨物運送の情報共有体制の確立や、共同配送・モーダルシフトなどの実践が含まれます。特に商材を大量に取り扱う卸売業は、その出荷タイミングやロット管理が輸送の効率化に大きく影響します。法改正を機に、自社の物流フローを再確認する企業が増加しています。

さらに、改正法はコスト面だけでなく環境負荷低減の観点からも意義があります。従来の過密なトラック輸送を緩和し、多様な輸送手段を活用することで、企業の持続可能性と競争力を高めることが期待されています。

1.3. 特定荷主とCLO(物流統括責任者)の位置づけ

2026年の法施行で注目されるのは「特定荷主」の定義と役割です。年間9万トン以上の貨物を取り扱う企業が該当するため、各事業分野の大手卸売業が幅広く対象になります。自治体や業界団体からの指導や助成も期待される一方、違反に対する罰則規定の検討が進んでいる点に留意する必要があります。

特定荷主は、CLO(Chief Logistics Officer)を選任し、社内の物流に関する戦略や施策を総合的に統括する責任を持ちます。従来は物流関連部門が各部署に散在していましたが、CLOを中心に全社的な最適化を目指す体制を構築することで、法令遵守とコスト削減を両立させることが可能になります。

このCLOは法改正に対応するだけでなく、AIやIoTなど新たなテクノロジー導入の推進役としても期待されています。企業競争力を維持するためには、単に規制をクリアするだけではなく付加価値を生み出す視点で物流戦略を立てる必要があります。

2. 2025年法改正と2026年施行の注意点


一連の法改正は2025年に決定し、2026年に本格施行される予定です。施行のタイミングに注目し、早めに準備を始めることが重要です。

2025年には具体的な法改正項目や施行要項が確定すると見られ、それを踏まえて企業が準備を進める流れになります。物流部門だけでなく、経営戦略や財務計画の観点からも物流改革に必要な投資や組織変更について社内で合意を得ることが求められます。物流企業との契約内容を見直すことも急務です。

特に卸売業の場合、大型商材を扱うケースが多いため出荷ロットやタイミングの最適化がドライバーの負担を左右し、コスト変動に直結します。輸送契約の再検討を通じて、将来的なメリットを最大化する視点が必要です。

2026年の施行後は、貨物重量届出や報告義務が段階的に厳格化される見込みです。努力義務が義務化へ移る可能性もあるため、期限に合わせた準備を進めるだけでなく、長期的に持続可能な物流モデルを構築することが重要です。

2.1. 卸売業が留意すべき主要改正点

多品種を一括で取り扱うことが多い卸売業は、その貨物量の把握とタイミング管理が物流効率化の要になります。改正法では、特定荷主として扱われる企業が輸送量と出荷計画を定期的に把握し、運送業者と連携して配送を最適化することが求められます。

特に大型商材の取り扱いがある場合には、荷役作業の安全と必要な人員の確保が課題となります。そこで、貨物の重量やサイズに応じて配送ルートや拠点を統合・再編するなど、大胆な施策を検討するケースも増えてきました。

このような取り組みは、一時的にコストが増加する可能性がありますが、長期的にはドライバーの定着や取引先との関係強化に寄与します。法改正を契機に、いかにして物流全体の競争力を高めるかがカギとなるでしょう。

2.2. 努力義務と義務化の違い

現行では、特定荷主に対して物流効率化が「努力義務」として課せられています。しかし、2026年以降は段階的に義務化へ移行する見通しがあり、違反時の罰則適用が想定される点には注意が必要です。

努力義務の段階では、企業ごとの事情を考慮しながら「できる範囲での対応」が容認される場合があります。とはいえ、本質的には早期からの準備が重要であり、義務化となった際には迅速に対応できる基盤づくりが重要です。

また、義務と努力義務が混在することで社内の温度差が生まれるリスクもあります。経営層や関係部署間で危機感を共有し、段階的に必要な要件をクリアできる体制づくりを進めることが理想的です。

3. 卸売業に求められる主な対応義務


法改正によって具体的に卸売業が担うべき義務と、それに伴う社内体制の整備方法を理解しておきましょう。

卸売業は、多種多様な商品を扱う特性から物流管理が複雑化しやすい傾向があります。そのため、特定の荷主として貨物重量の届出や安全対策の強化などの手続きを正確に遂行するための仕組み作りが欠かせません。

各部署間の連携も重要で、在庫管理や受発注システムなどのデジタル化を進めることで、物流データの円滑な収集・分析が可能になります。CLOが中心となって各部門の情報を整理すれば、コスト削減と輸送効率の向上を同時に実現することができます。

一方で、必要書類や報告書の作成業務が増えることも予想されるため、外部リソースの活用や社内プロセスの見直しが重要です。早めに具体的なアクションプランを設定し、実行に移す準備を整えましょう。

3.1. 貨物重量の届出と情報管理

まず重要なのは、自社が扱う貨物量を正確に把握・管理することです。改正法では、年単位で輸送量を報告する仕組みや、定期的な届出業務が強化される見通しです。

この作業を円滑に進めるためには、商品管理システムやWMS(倉庫管理システム)の導入など、デジタル化による自動集計の仕組みが不可欠です。情報を一元管理することで、在庫の最適配置や配送スケジュールの調整がしやすくなります。

精度の高いデータを活用することで、運送業者や取引先との連携を強化し、過剰在庫や無駄な輸送といったロスを削減することが期待されます。このような取り組みは法対応にとどまらず、企業経営における重要な資産ともなります。

3.2. CLOの選任と社内体制整備

大手企業を中心に、物流部門やサプライチェーン管理部門を管轄するCLO(Chief Logistics Officer)の設置が進んでいます。卸売業の場合、複数の納入先や仕入先を持つことが多いため、CLOが全体を統括しスムーズな情報共有と意思決定を行う仕組みが大きな強みとなります。

特定荷主としての複雑な報告義務や計画策定を円滑に進めるには、CLOを含む社内体制の強化が不可欠です。物流戦略にとどまらず、IT部門や営業部門との連携も見据えた組織づくりが求められています。

また、CLOの権限を明確化し経営層とのパイプ役を担うことで、施策の迅速な実行と効果検証につなげることが可能です。物流課題を経営課題として位置づける企業ほど変化に強いビジネス基盤を築けるでしょう。

3.3. 物流効率化の取り組み強化

運送コストが上昇する中、配送拠点の集約や無駄のない輸送スケジュールの構築などの「物流効率化」が急務となっています。卸売業の場合、商品特性や季節変動を考慮した柔軟な配送計画が鍵を握ります。特に共同配送やモーダルシフトといった施策は、運送事業者に過度な負担をかけずに大量の荷物を効率的に運ぶ手段として注目されています。

自社単独でカバーできない部分は、他社との連携や業界全体での協業を視野に入れる必要があります。実行にあたっては、現場の声を吸い上げる体制づくりやデジタル技術の活用が欠かせません。現実的なオペレーションと計画策定を連携させながら、段階的に物流改革を進めていくことが重要です。

4. 卸売業における2026年問題の影響


2026年問題は、卸売業のビジネスモデルや日々の業務プロセスに多大な影響を与えます。

法改正による規制強化に加えて、ドライバー不足の深刻化やコスト上昇リスクなどが複合的に作用します。従来の物流体制では対応しきれない部分が表面化するため、改革が後手に回ると企業競争力が大きく損なわれる可能性があります。

一方で、この期間を変革のチャンスと捉える企業も増えています。サプライチェーン全体を見直しDXによる業務効率化やネットワークの再編を進めることで、業務品質を維持しつつ労働負荷を軽減し経営の安定にもつなげられます。

ここでは、卸売業特有の課題と影響を再度検討しどのように乗り越えるかの指針を把握しておきましょう。

4.1. コスト上昇と価格転嫁

人件費の上昇や設備投資の増大により、物流全体のコストが高騰する傾向が続くと予想されます。卸売業はメーカーや小売業者と価格交渉を行う立場にあるため、このコストを最終的に価格へ反映させるタイミングと方法が重要です。

価格転嫁が進まない場合、企業の収益を圧迫するだけでなく長期的な取引関係に影響を及ぼす可能性があります。卸売業としては、付加価値を示すためにスループットの向上や安定供給の実現など、プラス要素を明確にする必要があります。

同時に、配送計画や在庫管理の効率化を推進し内部コストを最小化する努力も重要です。コスト最適化によるマージンの確保ができれば、取引先への価格提案に柔軟性を持たせることが可能になります。

4.2. ドライバー不足の深刻化

労働時間規制の強化により、現場で働くドライバーの拘束時間が見直されることになり、企業での運用がこれまで以上に厳しくなることが想定されます。

卸売業では近距離配送から長距離配送まで幅広くドライバーを手配するケースが多いため、不足が深刻化しやすいでしょう。その結果、需要に対して十分な配送リソースが確保できず、配送遅延やコスト上昇のリスクがあります。採用が難しいだけでなく、既存のドライバーの負担軽減やキャリアパス構築を積極的に進めることが重要です。

ドライバーへのアンケートやヒアリングを通じて、現場が抱える具体的な課題を把握し改善への小さなステップを積み重ねていくことで、労働環境をより魅力的に保つ取り組みが求められます。

4.3. 出荷頻度・物流ネットワークの見直し

卸売業では、取り扱う商品のばらつきや納品先の多様性から、出荷頻度と物流ネットワークの最適化が大きな課題となっています。従来、小ロット・高頻度出荷が当たり前でしたが、ドライバー不足を背景により効率的なロット管理が求められています。

具体的には、配送ルートの見直しや集約拠点の設置などが検討され、多品種をまとめて出荷する取り組みが進められています。これには物流ITシステムの活用が不可欠であるため、本格的なDXを視野に入れる企業が増えているのも特徴です。

その結果、出荷スタイルの変革は作業工程やコスト構造にも影響を与えます。納品先との協議を重ねながら、スムーズに移行できるかが成功のポイントとなるでしょう。

5. 「ホワイト物流」と行政による取り組み


トラックドライバーの労働環境改善や環境負荷軽減を目指す行政の取り組みは、物流業界全体の改革を促進します。

卸売業にとってはコストや運営のチャレンジが増える一方で、行政支援や補助金制度を利用することにより改革を加速させることが可能です。特にホワイト物流推進運動を通じて、企業が自主的に取り組む改革に対して表彰制度や事例共有が実施され、社会的評価を高める機会が提供されます。

国の施策は、労働条件の改善だけでなく、CO2排出量への配慮も強化する方向に転換しています。環境負荷低減に積極的な企業ほど取引先に好印象を与えられ、ブランド価値の向上につながるでしょう。

今後、各業界団体が物流業務の標準化や効率化モデルの策定を主導する動きが活発化すると予測されます。こうした動きへの早期参加を通じて知見やノウハウを共有することにより、企業としての持続可能性を高める機会が得られるでしょう。

5.1. ホワイト物流推進運動の概要

ホワイト物流推進運動は、トラックドライバーの労働環境改善を中心とした官民共同のプロジェクトです。このプロジェクトは、長時間労働や荷待ち問題の解消を図りながら、人材確保と流通コストの最適化を両立させることを目的としています。

企業が自主的に取り組む姿勢を示すために、ホワイト物流推進運動では「自主行動宣言」として目標と施策を明文化することが一般的となっています。宣言内容は公表されるため、社会的評価の向上や対外的な信用の向上に寄与することが期待されています。

卸売業者は、業者への荷待ち時間を削減するための仕組み作りや、荷役作業を行いやすい時間帯に調整するなど、実効性のある施策を導入することが効果的です。

5.2. 流通業務総合効率化法の改正内容

流通業務総合効率化法は、卸売業や小売業、運送業者が協力して物流全体の効率化を図るための法的枠組みを示しています。近年の改正では、特定荷主の定義拡大や報告義務の厳格化など新たな施策が盛り込まれました。

この改正により、各企業は物流データを活用してチャンスロスを削減し、共同輸送の促進に力を入れる機運が高まっています。大量の貨物を扱う卸売業だからこそ、業界全体で得られる効果も大きいと考えられます。

また、法改正は持続可能な物流モデルを広めるだけでなく、企業間の連携強化を促す意義があります。新しい付加価値を生み出すためには、積極的に法制度を活かした仕組み作りが欠かせません。

5.3. 改善基準告示とこれからの課題

ドライバーの拘束時間や休憩時間を厳格に管理する改善基準告示は、運送業者や荷主双方に大きな影響を及ぼしています。特に、荷主側が荷待ちの発生を当然視していたケースでは迅速な対応が求められるようになりました。

課題はまだ多く、法改正を受けても一部の事業者では実効性が向上しない可能性があります。そのため、行政や業界団体は引き続き情報共有の場を設置し、成功事例の横展開に努力を続けることが求められています。

卸売業としては、単に届け出や報告を行うだけでなく自社の業務プロセスを改善し、ドライバーが働きやすい環境の提供が鍵になります。これが結果的に物流効率化とコスト削減を両立するポイントとなります。

6. 2026年問題への具体的な対策


今後を見据え、法対応だけでなく新技術や働き方改革を組み合わせた総合的な戦略が不可欠です。

行政の施策に頼るのではなく、企業自身が主体的に取り組むことで、より競争力の高い物流体制が実現できます。卸売業では、大規模な共同配送の導入やモーダルシフトに力を入れ、トラックドライバーの負荷軽減を図るケースが増えています。

さらに、AIやIoTなどの先端技術を利用した需要予測や配送ルート最適化が進み、業務効率化とコスト削減を同時に達成する事例も目立ち始めました。これらは特定荷主としてさらなる義務が課される中でも、組織的な強みとなる可能性があります。

単に施策を導入するだけでなく、現場と管理部門が協力して改善サイクルを回しながら継続的に改善していく姿勢が重要です。問題が顕在化してから対応するのではなく、先行して体制を強化する企業が2026年問題を乗り越えていくでしょう。

6.1. 共同配送・モーダルシフトの活用

卸売業界では、拠点間やエリア間で物流を共同化し、効率化を進める取り組みが活発化しています。複数の企業が同一のトラックや倉庫を共有すれば、積載率の向上や配送頻度の最適化が期待できます。

さらに、鉄道や船舶を活用するモーダルシフトを組み合わせることで、トラックにかかる負担を軽減しながら大量輸送を実現することが可能です。長距離輸送を鉄道や船舶に移す動きは、CO2排出削減にも寄与します。

共同配送やモーダルシフトは、自社の枠を越えて他社との連携が必要となるため、信頼関係の構築や情報共有ルールの確立が欠かせません。とはいえ、うまく機能すれば大きなメリットが得られるため、早期の検討が求められています。

6.2. AI・IoTによる物流最適化

近年注目されているのは、AIによる需要予測や在庫管理の高度化です。従来、担当者の経験や勘に頼ることが多かった出荷量の予測がデータドリブンでより正確に行えるようになりました。

IoTを活用して車両や倉庫の稼働状況をリアルタイムで管理すれば、最適な輸送ルート、タイミング、積載率を速やかに算出できます。卸売業にとっては多品種少量の在庫コントロールにも応用が可能です。

これにより、ピーク時の配送遅延リスクを最小限に抑えつつ、コストや資源を効率的に活用できます。新技術の導入は初期投資がかかるものの、中長期的な視点で見れば必要不可欠な選択肢になりつつあります。

6.3. 労働環境の改善と働き方改革

ドライバー不足を解消するためには、給料体系や福利厚生だけでなく業務プロセスの見直しが必要不可欠です。長時間労働を是正するために車両の積み込み時刻を厳守する制度を導入するなど、荷主の協力が重要です。

倉庫作業員や事務スタッフに対しても、働き方改革を進めることで定着率を高めることができます。リモートワークや時差出勤を一部業務に導入し、繁忙期と閑散期で柔軟に人員配置を変えるなどの工夫も考えられます。

労働環境の改善は直接的な法対応ではありませんが、物流効率化や離職率の抑制につながり、結果的に企業の競争力を底上げする要素となります。現場の声を適切に吸い上げつつ、段階的に改革を進めることが重要です。

7. まとめ


2026年問題は、卸売業を含む国内物流構造の大きな変革を促します。

法規制の強化に加え、ドライバー不足やコスト上昇など、複数の課題が同時に重なるため、早期の対策が不可欠です。卸売業は特定荷主として、未来を見据えた準備を進め、CLOの選任や貨物量の正確な管理、共同配送など効率化施策を具体的に検討すべきです。

激動の時代を乗り切るポイントは法規制への対応を契機とした組織改革と新技術の活用です。経営戦略と連動した物流施策を打ち出せる企業は、持続的な成長と社会的評価を獲得できます。これから2026年に向け、荷主、運送事業者、行政が連携し、新たな仕組みを整えていくでしょう。

卸売業も変化を前向きに捉え、競争力と事業継続性を両立させる取り組みを進めることが時代をリードする鍵となります。