製造業 関連コラム経験と勘に頼らない! 製造業におけるデジタル人材の育成ポイントを解説
2024年12月17日
企業が競争力を失わずに、持続的な成長を遂げていくにはデジタルに強い人材の確保や育成が欠かせません。製造業のデジタル化においてはデジタル人材の存在が重要であるため、既存のシステムや労働環境を見直し、働く側にとって魅力のある企業へと変えていく必要があります。
この記事では、企業がデジタル化に取り組むときの考え方やデジタル人材育成のポイントなどを解説します。
目次
1. 製造業のデジタル化とは 1.1. デジタル化を実現するメリット 1.2. 経験と勘に頼らない! デジタル化を進めるうえでの課題 2. デジタル人材に求められる資質 2.1. システム思考 2.2. 数学の知識と能力 3. 製造業でデジタル人材が不足する理由 3.1. IT分野への投資の遅れ 3.2. デジタル化の難易度の高さ 4. 社内でデジタル人材を育成するポイント 4.1. OFF-JTの活用 4.2. 研修による育成 4.3. 補助金の活用 5. デジタル人材を活かすための環境整備 6. まとめ:製造業のデジタル化を推進するために、労働環境やシステムなどを見直そう
1. 製造業のデジタル化とは
製造業におけるデジタル化とは、手作業や紙による情報管理といったアナログな業務について、デジタルツールを活用することで改善を行い、生産性の向上につなげる取り組みだといえます。IoTやAIの活用や業務システムの導入などによって、非効率に進められていた業務の効率を高めることが狙いとしてあります。
デジタル化の具体例としては、次のようなものが挙げられるでしょう。
製造業のデジタル化の具体例
・紙の帳票をデータ保存し、ペーパーレス化を図る
・IoT機器を活用して生産ラインの稼働状況を把握し、改善につなげる
・生産管理システムの導入によって、業務に関する情報を一元化する
・エネルギーコストの増大
・熟練した技術者のスキルを可視化し、人材教育に役立てる など
さまざまなデジタルツールを活用し、自社の製造現場における情報を一元管理することで、課題解決に結びつけられます。デジタル化に取り組むことで、より迅速な対応が行えるようになり、業務効率を高め、生産性の向上につなげていけるでしょう。
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1.1. デジタル化を実現するメリット
製造業においてデジタル化を行うメリットとして、生産性の向上によって人材不足の問題の解消につなげられる点があります。経済産業省が公表している「2020年度ものづくり白書」では、デジタル技術の活用理由(複数回答)として以下のものが挙げられています。
デジタル技術の活用理由
・人の作業負担の軽減
・生産体制の安定
・労働時間の短縮
・在庫管理の効率化
・開発・製造等のリードタイムの削減 など
上記のように、生産性の向上に関係する理由が挙げられているのが傾向として分かります。日本においては、少子高齢化に伴う労働人口の減少は今後も続くことが予測されているため、同業他社との競争力の低下を防ぐために業務のデジタル化による生産性の向上は多くの企業で必要なことだといえるでしょう。
アナログな業務が多い企業ほど、デジタル化を行うメリットは大きいので中長期的な視点に立って、継続した取り組みを行うことが大切です。
1.2. 経験と勘に頼らない! デジタル化を進めるうえでの課題
企業が業務のデジタル化に取り組んでいくうえでの課題として、デジタル技術を活用するノウハウが不足しているという点が挙げられます。デジタル化を進めていく必要性は感じていても、システムやIoT機器に関する知識や経験を備えた人材がいない場合もあるでしょう。
新たにデジタル人材を採用したり、育成したりするためにはそれなりに負担が生じてきます。自社のリソースが不足している場合は、必要に応じて専門知識や豊富な実績を備えた外部企業にサポートしてもらうことも検討することが大事です。
また、すべての業務を一気にデジタル化しようとすれば、コストの負担も大きくなりがちです。優先してデジタル化を進める部分を明らかにし、まずは一部の業務からデジタル化を行っていくことも検討してみましょう。
2. デジタル人材に求められる資質
製造業にまつわるさまざまな業務をデジタル化していくには、デジタル人材の存在が不可欠だといえます。デジタル人材は最新のデジタル技術を用いて業務改善に取り組み、生産性の向上や事業の成長に貢献する人材のことを指します。
ここでは、どのような資質を備えた人材がデジタル人材に適しているかを解説します。
2.1. システム思考
デジタル人材の資質として、「システム思考」を備えているかという点が挙げられます。多くの業務における課題を整理し、統合的なシステムを構築するには、全体をふかんしたうえで最適な方法を選択していく能力が必要です。
全体最適を軸としてデジタル化を担う存在として、システムエンジニア(SE)が挙げられるでしょう。製造業にかぎらず、どのような業種でもデジタル化を推進していくにはSEの存在が欠かせないため、人材確保の必要性があるといえます。
2.2. 数学の知識と能力
製造業のデジタル化に必要とされるものの多くは、「数学の知識と能力」が問われるものです。IoTやAIなどの最新デジタル技術の仕組みを理解し、自社の業務改善に取り組んでもらうには、数学の適性が不可欠です。
デジタル化した製造業においては、データ分析やモデリング、シミュレーションなどの部分で数学の能力が発揮されます。AIを活用する場合も、数学の知識があることで学習データや推定結果の信頼性向上につながるでしょう。
3. 製造業でデジタル人材が不足する理由
デジタル化を推進するにはデジタル人材の確保が必要ですが、思うように人材を確保できないといった課題があります。なぜデジタル人材が不足しているのか、その理由を解説します。
3.1. IT分野への投資の遅れ
デジタル人材が製造業で不足している理由として、IT分野への投資が遅れたことが挙げられます。ものづくりや生産設備への投資を優先してきた結果として、デジタル技術の活用に必要な投資が後回しになってしまった傾向が見られます。
特に、中小企業においてはデジタル人材のポジション自体が用意されていないケースがあり、新たな人材を呼び込む環境が整っていない場合があるでしょう。業務のデジタル化が遅れれば、既存の従業員の作業負担が大きくなっていき、製品の品質低下などさまざまな問題を引き起こす原因になるため、IT分野への投資をどのように行うかをしっかりと検討していく必要があります。
3.2. デジタル化の難易度の高さ
製造業の場合は、デジタル化の難易度が高いといった理由も、デジタル人材が不足している理由として挙げられます。業務の複雑化や属人化、レガシーシステムによる弊害といった諸問題を解決するには、多くのアプローチが求められるでしょう。
そのため、デジタル人材が働きやすい環境を整えなければ、業務負担が大きくなってしまい人材が集まりづらいといえます。また、デジタル化のために新たなシステムなどを導入しても、ベテランの従業員が新しい技術をうまく使いこなせないといった問題も起こりがちです。
全社的なデジタル化の取り組みは、時間をかけて進めていく必要があるため、部署間や従業員などともコミュニケーションを図りながら、取り組んでいくことが大切です。
4. 社内でデジタル人材を育成するポイント
デジタル人材の採用活動を進めていくのと並行して、社内でも育成していくことが重要です。どのような方法で人材を育成していけばよいかを解説します。
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4.1. OFF-JTの活用
デジタル人材を育成する方法の1つとして、OFF-JT(Off-the-Job Training)が挙げられます。業務外での教育体制を整えることで、デジタル人材の育成を効率良く進めていくことが可能です。
自社で教育を行うノウハウがなくても、eラーニングなどを活用することで、必要な知識やスキルを身につけてもらうことができます。動画の教材や通信教育などを取り入れることで、従業員がいつでも学べる環境を整えることが大切です。
4.2. 研修による育成
デジタル人材の育成には、職業能力開発大学校などのポリテクカレッジを利用して外部研修を実施してみるのもよいでしょう。社会人向けの研修が行われているので、自社でデジタル人材の育成が難しいと感じるときは、積極的に活用してみることが大事です。
企業ごとに抱える課題は異なりますが、ポリテクカレッジでは研修プログラムをオーダーメードで作成してもらえるコースも設けられているので、体系的に学習できる機会の提供につなげられます。
4.3. 補助金の活用
デジタル人材を育成する際は、補助金の活用も検討してみましょう。厚生労働省が実施している「人材開発支援助成金」を活用すれば、教育訓練に必要なコストの負担を軽減できます。
例えば、人材育成支援コースでは職務に関連する知識やスキルの習得のための訓練などを実施すると、訓練にかかった経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。また、人への投資促進コースはデジタル人材・高度人材を育成するための訓練が対象となるため、コスト負担を軽減しながら人材育成に取り組めます。
5. デジタル人材を活かすための環境整備
デジタル人材を活用するためには、社内の環境を整備することも重要です。どのような点を見直していけばよいかのポイントを解説します。
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5.1. 労働環境の見直し
デジタル人材の獲得競争は激しさを増しているため、多くの人材を呼び込むためには労働環境の見直しが必要です。柔軟な勤務体制の構築や適正な人事評価制度を整え、新たに確保した人材が離職しない環境を整えていきましょう。
まずは既存の従業員へのヒアリングを実施し、働く側の視点からどのような点を改善してもらいたいかを把握することが大切です。そのうえで業務の属人化を防ぐために、既存業務のフローを見直し、人材育成が行えるプログラムなどを整えていくことが重要だといえます。
また、これまでの採用基準の見直しも図り、多様な人材を受け入れやすい環境を整えていくことも大事です。子育て中の人や高齢者にとって働きやすい環境は、他の従業員にとっても働きやすい環境となるでしょう。
5.2. 経験と勘に頼らない!生産管理システムの見直し
レガシーシステムを利用し続けていると、新しいシステムの活用を想定してスキルを身につけている若手の人材が活躍しづらいといえます。採用や人材育成の面で不利になる恐れがあるため、既存のシステムに問題がないかも見直していく必要があります。
DX推進支援サービスの利用も1つの方法ですが、業務の基盤をさらに強固なものにするために、製造業の要である生産管理システムについても見直してみましょう。ニッセイコムが提供している「GrowOne 生産SR」なら、製造現場の負担軽減をコンセプトに設計された生産管理システムであるため、さまざまな業種に対応した使い方ができます。
6. まとめ:製造業のデジタル化を推進するために、労働環境やシステムなどを見直そう
自社の業務におけるデジタル化を推進していくことは、業務効率を高めて生産性の向上につなげるだけでなく、デジタル人材の確保や育成にもつながっていきます。労働人口の減少などの理由から、デジタル人材の獲得は激しさを増しており、企業が持続的な成長を維持するにはどのように人材を確保するかが課題です。
社内で人材を育成するためのノウハウやリソースが不足している場合は、外部のサポートを受けるなどして環境を整えてみましょう。また、労働環境やシステムなどの見直しも同時に行っていくことが大切です。ニッセイコムのDX推進支援サービスについて、導入を検討されている方はぜひお問い合わせください。