製造業 関連コラム製造業におけるAI活用事例12選!
工場の生産性向上などAI導入のメリットを解説
2024年12月17日
製造業はものづくりの根幹を担ってきましたが、大きな転換期を迎えています。特に、DX化は新たな事業展開を視野に入れるためにも喫緊の課題だと言えるでしょう。また、労働力不足や技術の継承、コストの増大、国際的な基準や目標への対応など、製造業が抱える問題は少なくありません。そこで注目を集めているのがAIの導入です。
この記事では、製造業におけるAI導入の必要性やメリット、活用事例について詳しく解説します。導入に失敗しないためのポイントや生産管理に使えるシステムについてもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 製造業におけるAI導入の必要性 1.1. 生産管理システムの導入目的 1.2. 生産管理システムの必要性 2. 製造業におけるAI導入率 3. 製造業におけるAI活用のメリット 3.1. 作業効率が上がる 3.2. 現場の安全性が高まる 3.3. コストを削減できる 3.4. 技術の伝承ができる 3.5. 製品の品質を均一 4. 工場の現場作業におけるAI活用事例 4.1. 設計の効率化 4.2. 検品・外観検査の自動化 4.3. 化学プラントの自律制御 4.4. 画像認識による品質管理 4.5. ディープラーニングを導入した産業用ロボットの活用 4.6. AIカメラによるメーターの自動読み取 4.7. 自動車メーカーでの異音検査・磁気探傷検査 4.8. 収集データから不具合要因を特定 5. 工場の全体管理におけるAI活用事例 5.1. 自律型工場の実現 5.2. スマートファクトリーの支援 5.3. 最適な生産計画の策定 5.4. AI-OCRの導入 6. 製造業のAI導入で失敗しないためのポイント 6.1. 課題やAI導入の目的を明確にする 6.2. AIと人間の業務範囲を明確にする 6.3. 現場との連携を密に取るようにする 6.4. 長期的な視点で効果を評価する 7.生産管理は「GrowOne 生産SR」で一元管理 8. おわりに
1. 製造業におけるAI導入の必要性
日本において、製造業は「ものづくり」の根幹を担い、経済的成長を支えてきた業種です。しかし、製造業は今や大きな転換期を迎えており、業務効率化やペーパーレスを始め、新たな事業のありかたを模索し実装していくDX(デジタルトランスフォーメーション)化が喫緊の課題とされています。その中で特に注目を集めているのがAIの導入です。
今後、製造業でAI導入が必要となる主な理由は、以下の通りです。
【製造業でAI導入が今後必要となる理由】
・労働力不足・技術の伝承
・既存人材の高齢化・システムの老朽化への対応
・競争の激化
・エネルギーコストの増大
・国際的なESG基準の導入、温暖化対策目標への対応
日本では少子高齢化が進んでおり、製造業においても特に若手の労働力不足が本格化してきました。少子高齢化に伴い、既存人材の高齢化も加速しているのが現状です。
若手の労働力が不足することで、熟練技術者の技術継承も困難となり、事業を継続できなくなるリスクが発生しかねません。また、既存人材の高齢化は離脱の可能性を高めるでしょう。人材が不足すれば、システム老朽化に伴い最新設備を導入したくても対応できなくなる可能性もあります
また、製造業においてもグローバル化の波は避けられません。世界を取り巻く政治・経済情勢の変化によって、競争の激化が生まれ、エネルギーコストも増大し、経営を圧迫しつつあります。こうした状況下で勝ち残っていくためには、いかに業務効率化とコスト削減を進めていくかが非常に重要です。
さらに、国際的なESG(環境・社会・ガバナンス)基準の導入や温暖化対策目標への対応も求められます。ESGの視点はこれからの事業運営に不可欠です。また、2030年のCO2の46%削減、2050年のカーボンニュートラルといった温暖化対策目標への対応も大きな課題となっています。
2. 製造業におけるAI導入率
総務省 情報流通行政局 令和4年 通信利用動向調査報告書(企業編)によると、日本の製造業におけるIoTやAIなどのシステム・サービスを導入している企業は19.0%、導入していないが導入予定がある企業は13.4%という結果でした。
現状では導入していない企業が多いですが、産業全体を見ると導入している企業が13.5%、導入予定がある企業が10.5%であることから比較的進んでいることが分かります。
3. 製造業におけるAI活用のメリット
では、製造業におけるAI活用のメリットはどのような点にあるのでしょうか。
【製造業におけるAI活用のメリット】
・作業効率が上がる
・現場の安全性が高まる
・コストを削減できる
・技術の伝承ができる
・製品の品質を均一にできる
ここでは、上記メリットをそれぞれ詳しく解説します。
3.1. 作業効率が上がる
AI導入によって得られるメリットの一つが、作業効率が上がることです。製造業では工程を無視して製品を生産することはできません。また、最終的な加工・整形段階で問題が生じた場合、どの工程に問題があるのか細かく洗い出す必要がありますが、これらを人の手で行うと非常に時間がかかります。
例えば、外観検査にAIを導入することで製造の全工程をデータで確認できれば、大幅な作業効率化が図れます。外観検査とは、製造された製品が規定された品質基準に適合しているかどうか視覚的に確認する検査方法の一つです。商品パッケージに異物が付着していないか、変色が見られないかなどの検査が挙げられます。
3.2. 現場の安全性が高まる
製造業の現場は、危険と隣り合わせです。そのため、作業員が安心して働ける環境の構築が欠かせません。AIの導入により、作業現場の安全性を高めることが可能です。
例えば、立ち入り禁止エリアに作業員が入らないかカメラで監視する、重機の近くに人がいないかGPSを用いて確認することで、現場の安全性が高まるでしょう。
3.3. コストを削減できる
コストを削減できる点も、AIの導入によって得られる大きなメリットです。
例えば、定型的な作業をAIロボットに行わせる、識別をAIによる自動判定で行うことなどにより、人件費の無駄を省いてコストを削減するとともに、割いていた人材をよりコアな業務に割り振ることができます。また、AIの活用により機器の稼働状況をリアルタイムで確認でき、的確に予想することも可能です。
例えば、生産ラインは必要な時に必要なだけ稼働することでコストを削減できますが、人による感覚的な予想では無駄が生じてしまいます。具体的なデータやリアルタイムの売上などの情報を共有しつつ効率的に稼働できれば、大幅なコスト削減が図れるでしょう。
3.4. 技術の伝承ができる
製造業が抱える構造的課題の一つが、労働力不足や技術者の高齢化による技術の伝承です。せっかく熟練した技術者がいても、受け継ぐ若手がいなければ事業が成り立たなくなる事態も起こり得ます。
AIを導入し、熟練技術者の技術を解析してデータ化することで、技術の伝承が可能です。例えば、熟練技術者のスキルを、アイトラッキング(視点の場所や頭部に対する眼球の動きを計測し、追跡する方法)などの技術を用いて定量的データとして扱うことができれば、効果的に技術を受け継ぐことができます。
製造業では個人の技術が製品の完成度に影響することが少なくありません。技術の伝承により若手の技術を向上できれば、より良い成果を生むことができるでしょう。
3.5. 製品の品質を均一にできる
製品の品質を均一にできることも、AIを導入するメリットです。人の手による作業や検査ではばらつきが生まれ、不良品が出て損害を被る事態を引き起こしかねません。作業や検査にAIロボットを導入することで、たとえ不良品が出た場合も即座に検知でき、品質の均一化が可能です。
また、返品や手直しで生じる費用も削減でき、作業の効率化にもつながるでしょう。
4. 工場の現場作業におけるAI活用事例
ここでは、製造業の工場現場での作業におけるAI活用事例をご紹介します。
【工場の現場作業におけるAI活用事例】
・設計の効率化
・検品・外観検査の自動化
・化学プラントの自律制御
・画像認識による品質管理
・ディープラーニングを導入した産業用ロボットの活
・AIカメラによるメーターの自動読み取り
・自動車メーカーでの異音検査・磁気探傷検査
・収集したデータから不具合要因を特定
4.1. 設計の効率化
包装資材全般の製造・販売を手掛ける会社が、設計をAIで効率化するサービスを導入した事例です。
製造業では、製品開発においてさまざまな材料の中から最適なものを選定し、どう製造していくか試行錯誤するケースが少なくありません。しかし、材料についての知識を作業しながら覚えていかなければならない状況が課題でした。経験により培われたノウハウによるオペレーションが基盤にあることは強みでもあり、弱点でもあったのです。
経験に依拠する作業が多いと、熟練技術者など一部の人に負担が集中します。加えて、人手不足の状況の中、人材確保も大きな問題です。そこで、AIシステムを導入し、実験や解析周りの業務を効率することにしました。
明確に数値化し運用できるため、研究者・技術者や理系出身者でなくても、蓄積されたデータやサンプルの結果を入力することで誰でも理解できる点が、導入によって得られる大きなメリットだとわかります。
4.2. 検品・外観検査の自動化
製造業では、検品・外観検査を行ってから製品を出荷しなければなりません。ある金属部品メーカーでは、製造業向けの外観検査自動化AIサービスを導入し、低コストかつ精度の高い検品・外観検査の自動化を実現しました。
工場では大量のデータを生成しますが、すべてのデータをクラウドに送って保存したりサーバー側で処理したりしようとすると通信コストが大幅にかさんでしまいます。現場近くに置いたエッジ機器側で処理が可能なエッジAIを用いたシステムの導入により、通信コストを削減しつつ高速なデータ処理を行い、プライバシー保護も可能です。
この事例では、カメラの撮影環境を精密に整備することで、不良品の学習データが収集困難であることを踏まえ、良品のみを学習データとして異常検知するように設定しました。人がルーペで目視してもわからない不良を検品できるようになり、99%を超える精度を実現しています。
4.3. 化学プラントの自律制御
ある電機メーカーでは、AIで化学プラントを自律制御する技術を開発。実際のプラントに強化学習AIを安全に適用し、従来は手動制御のみでしか対応できなかった箇所もAIで制御できるようになりました。
化学プラントは、天候や気温の変化など外部からの影響を受けやすく、現場の作業員が手動でバルブを動かし、稼働を調整しなければなりませんでした。AIによって温度や圧力など10以上もあるパラメータを監視し、人の手を介さずにバルブを30日以上連続で作動できるようになったのです。
プラント操業はベテラン・熟練技術者頼みの側面が強く、そうした技術者の退職によるノウハウや技術の伝承は大きな課題です。AIによる自律制御が定着することで、現場に張り付いて操業する必要がなくなり、ベテランがいない事態をカバーできます。
今後、さらなる自律化を目指し、プラントが自ら学んで動くことを見据えて、制御AIだけでなく品質予測や改善点を見つけ出すAIの研究開発も進みつつあります。
4.4. 画像認識による品質管理
グローバルに事業を展開するあるメーカーは、製造現場における作業員の逸脱動作やライン設備の動作不具合などの予兆を検出し、品質改善や生産性向上を支援する画像解析システムを開発しました。
画像解析技術を用いることで、製造現場の監視画像を解析して逸脱動作や設備・材料の不具合をアラートとして通知することができ、早期発見により高度な品質管理が可能です。
また、大量の画像データから品質改善や生産性向上に関する情報だけをリアルタイムに抽出し解析することで、不具合の早期発見、人員の最適な配置、作業の分析を可能にしました。品質の安定化、作業効率の改善にAIを活用している取り組みです。
4.5. ディープラーニングを導入した産業用ロボットの活用
産業用ロボットを製造しているある企業が、複数の企業の協力を得てディープラーニングの導入を構想している事例です。ディープラーニングAIによる制御が組み込まれた産業用ロボットシステムを稼働することで、サーバーにデータを集約し、解析できます。
これにより、リアルタイムで設備の制御を行うことが可能です。各ロボットおよび生産設備はネットワーク上でつながっており、工場内に設置されるサーバー群(フォグ)内で処理するため、解析スピードが格段に速くなります。フォグはクラウドとは独立しているため、外部接触が少なくて済み、セキュリティー面での信頼性も高い点が特徴です。
4.6. AIカメラによるメーターの自動読み取り
ある企業では、小型AIカメラを用いたアナログメーターのデータ化、AI監視システムを開発しました。従来は人の目視で確認していた作業の自動化により、製造業の働き方改革に貢献することも期待されています。
また、どのような設備にも設置しやすいよう取付方法にも工夫が施されているため、さまざまな形状の製品を製造する工場での利用が見込まれています。
稼働状況の確認、データの取得など従来は目視で実施していた確認や記録の作業を自動化できるため、大幅な作業効率アップが可能です。アナログメーターを、カメラを用いて連続・秒単位で撮影できるので手作業よりも詳細なデータを収集できます。さらに、遠隔地から安全に監視し、異常アラートの発出も可能です。
電源さえあれば設置でき、大掛かりな設置が不要なので導入コストを抑えられるなど、今後さまざまな工場でのデジタル化に貢献することも期待できるでしょう。
4.7. 自動車メーカーでの異音検査・磁気探傷検査
自動車メーカーにおける異音検査・磁気探傷検査についての事例もあります。
ある自動車メーカーでは、音による官能検査(異音検査)において、検査員の個人差によるばらつきや、熟練技術者の確保が課題でした。また、異音を聞き分ける作業自体が検査員の精神的ストレスとなっている可能性もあったのです。
そこで、手動による異音検査を、音のデータをもとにAIに置き換え、人手に頼らず均一かつ効率的な検査を可能にしました。
また、磁気探傷検査をAIにより自動化した事例もあります。
ある自動車メーカーでは、フロントハブの検査プロセスにおいて、外観目視検査と磁気探傷検査を人の目で行っていました。しかし、一般的なマシンビジョンでは、検査ロジックにおいて熟練技術者の技能を再現しきれず、不良品を良品と判定してしまう見逃し率、良品を不良品と判定する過検出率が高いという問題があり、実現できない事情があったのです。
そこで、自動化を実現するためにAIを導入したところ、見逃し率・過検出率の制度が大幅に改善しました。これにより、人的リソースも大幅に削減できた事例です。
4.8. 収集データから不具合要因を特定
ある電機メーカーでは、大量の欠損を含むデータからであっても不具合の要因を特定できるAIを開発しました。
工場やプラントなど、製造業の現場では、製造物のさまざまなデータが日々大量に蓄積されます。しかし、収集できるデータの中には測定ミスや通信エラーが発生するものもあり、中には抜き取り検査しか行わないため全体のうち少数しかデータを収集できないケースもありました。
開発されたAIでは、欠損値の多いデータからでも高精度な回帰モデルの構築が可能です。他の最先端のアルゴリズムと比べても推定誤差の大幅な削減を実現しました。
5. 工場の全体管理におけるAI活用事例
次に、製造業の工場の全体管理におけるAI活用事例を見ていきましょう。
【工場の全体管理におけるAI活用事例】
・自律型工場の実現
・スマートファクトリーの支援
・最適な生産計画の策定
・AI-OCRの導入
5.1. 自律型工場の実現
ある化学メーカーでは、自律型工場の実現に取り組むべくAIを導入しました。大学と共同で開発したAIに、過去に蓄積した熟練作業員のノウハウや意思決定に関する膨大な記録から抽出したデータを学習させたのです。
具体的には、設備の稼働状況や製造工程中の品質の変化、それに対してどう対応したかという操作履歴などのデータを蓄積。これにより、工場ではAIが司令塔となり、無駄の少ない運転を実現し、設備の変調を予測することでコスト削減・生産性の改善を実現しました。ベテラン・熟練技術者の大量退職による生産性低下という製造業を取り巻く環境の中、大幅な生産性向上に居したのです。
化学プラントでは製造工程が見えにくいため、トラブルを解決するためにかなりの時間を要する傾向があります。AIを活用した自律型工場の実現に取り組むことで、変調を事前に予測して故障を防ぎ、設備メンテナンスの過剰なムダをなくすことを目指している事例です。
5.2. スマートファクトリーの支援
あるロボット製造業の企業では、IT企業との共同開発により、製造業のスマートファクトリー化、ものづくりの現場のプロセス改革を支援するソリューションを開発しました。工場の見える化を可能にし、自動化や自律化にもつながる技術です。
IoTやAI技術の活用により生産管理を自動化・最適化するとともに、工場が抱える課題を抽出・分析し、カメラやセンサーなどの機器や通信環境の一括提供も可能です。
AIの活用により、PDCAサイクルのうち「C(Check)」のステップについて、生産ラインから取得したデータをAIの解析技術で分析できます。設備の故障の予測も可能なので、不良品の割合を下げ、設備の稼働力向上にも期待できるでしょう。
5.3. 最適な生産計画の策定
ある飲料メーカーが、生産および販売の最適化により、利益の向上とキャッシュフロー改善を実現するべくAIを活用している事例です。
飲料品分野は、気候の変化や消費者の動向に大きく左右されるため、柔軟かつ迅速な生産計画の策定・変更が不可欠です。しかし、従来は経験豊富な従業員が複数名で生産計画を立案・変更しており、人の手に頼った対応しかできていませんでした。また、エリア単位で生産計画を策定していたため、エリアごとの個別最適にとどまり、全体の最適化を前提とした生産計画の立案はできていないのが実情だったのです。
そこで、電機メーカーと共同でAIを活用した生産計画立案システムを開発しました。具体的には、欠品・品薄・過剰などといった在庫状況を自動抽出し、AIがタイムリーに生産計画を策定・変更していきます。
複数名で多くの時間を費やしていた生産計画の策定・変更作業を大幅に短縮できた事例です。
5.4. AI-OCRの導入
ある鉄鋼メーカーでは、AI-OCRの導入により、業務時間の削減とともに従業員の精神的負担も軽減することに成功しました。AI-OCRとRPAを組み合わせることで、業務効率化を実現した事例です。
製造業の現場では、手書きの文字や数字などによる品質記録が日々大量に発生します。また、取引先や仕入れ先からの伝票、納品書、作業証明書などの手書き帳票も大量に発生していました。しかし、紙の点検記録をデータ化するためには、膨大な人手と時間が必要です。加えて、すべて手入力でデータ化する作業は本来のコア業務に注力する時間を削りかねず、入力ミスによる手戻りの発生など現場への負担が大きいことも課題でした。
全社で共通のツールを使用することで、ノウハウが蓄積され、使い方の共有の手間も省くことが可能です。
6. 製造業のAI導入で失敗しないためのポイント
製造業でAI導入のためにプロジェクトを立ち上げたもののうまくいかなかったケースもあります。例えば、プロジェクトが進まないケースから開発途中・導入直前で断念するケース、導入したものの効果を実感できないケースなどさまざまです。AI導入に失敗しないためにも、よくある失敗の原因とポイントを押さえておきましょう。
製造業のAI導入で失敗する主な原因は以下の通りです。
【製造業のAI導入で失敗する原因】
・課題やAI導入の目的が曖昧
・AIと人間の業務範囲が不明確
・現場との連携ができていない
・短期間で効果を得ようとする
こうした失敗を回避するためにどのようにすればよいのか、ポイントと重要性を解説します。
6.1. 課題やAI導入の目的を明確にする
よくある失敗の一つが、AI導入の目的が曖昧なことです。そもそも何に、何のためにAIを導入したいのか十分検討せずに、他社の成功事例を見聞きして「取りあえず導入しさえすれば良い」と考えてしまう、あるいは政府や自治体から補助金が出るからなど目先の利益に飛びついて失敗するケースは少なくありません。
AI導入は、自社が抱える課題を解決するために行うのが本来の姿です。具体的な課題や、AIでできることを十分に検討せず、取りあえずAIを導入すれば何かしら課題解決できるだろうという考えだけでは、失敗する可能性が高まります。
また、AIはどのように学習させるかによって解決できる課題が変わってくる点にも注意が必要です。例えば、「○○の事務作業を自動化したい」「単純だが人手がかかる仕事を省人化したい」など、具体的な課題を把握しておく必要があります。
計画倒れにならないためにも、まずは自社が抱える課題を詳細に洗い出しましょう。そして、AIを自社のどの業務に導入し、それによりどの課題を解決できるのか検討した上で導入を決定することが重要です。
6.2. AIと人間の業務範囲を明確にする
AIによりどのような業務も自動化できると考え、AIの業務範囲を広げ過ぎて失敗する例も多いです。業務の内容によってはフィットせず、思うように効率化が進まない場合もあります。AIに何ができるのか把握しないまま導入を決定しても、自社の課題を解決できない事態に陥りかねません。
例えば、自社の営業・接客支援のためにAIの導入を検討する場合を考えてみましょう。当初はチャットボットが状況を分析し、適切な自社の商材を提示してくれることを想定していたとします。しかし、開発段階でチャットボットの業務範囲を拡大しすぎると、AIに学習させるためのデータ準備などの手間が増えすぎて導入を断念することになりかねません。
AIには得意なことと不得意なことがあるため、仮にAIができることでも人の手で作業した方が良い、あるいはコストを削減できる業務もあります。AIは万能ではないことを理解した上で、AIと人間の業務範囲を明確にし、どのように分担するのかあらかじめ検討しておくことが非常に大切です。
6.3. 現場との連携を密に取るようにする
AIを導入し、活用していくためには現場との連携を密に取ることが不可欠です。この点を綿密に検討しておかないと、導入しても現場でうまく使いこなせません。実際に使う現場との連携を取れずに声を反映できないと、以下のような失敗に陥る可能性があります。
・プロジェクトチームだけで検討していたため現場にとって使いにくい
・手続きがかえって煩雑化する
・費用対効果が良くない
・不具合の可能性が周知されず、フローやマニュアルが整備されない
・作業が中断する
AIを導入する際に、現場の声を無視して経営陣やシステム担当者だけで導入プロジェクトを進めては、うまく活用できず導入する意味がありません。AI導入の必要性や導入後の業務範囲・分担を明確にして現場に周知するとともに、検証結果を現場と共に確認し、費用対効果についても不満の声が出ないよう十分検討しておきましょう。
6.4. 長期的な視点で効果を評価する
AIを導入する際には、すぐに予想していた効果が出ると期待するかもしれません。しかし、導入初期に現場での不慣れによるミスが発生する可能性もありますし、想定しない事態が生じてAIに追加で学習させなければならなくなる可能性もあります。そのため、長期的な視点で効果を評価することが重要です。
数か月単位で効果が感じられないから失敗だと判断するのは早計です。年単位など長期的な視点で効果を検証し評価できない体制では、本当は効果が出ていた、あるいは副次的効果が得られていたことに気づくこともできません。
例えば、「クレームの件数を3ヵ月で〇割減少させる」という短期的目標を掲げてAIを導入したとしましょう。その期間内にKPIが達成できなくても、24時間365日対応できるようになったことで問い合わせ数が大幅に上昇すれば、従来は得られなかった顧客の声が得られる可能性もあります。このように、KPIとAI導入によって実際にもたらされる効果がずれることは往々にしてあることです。
短期的な数字に表れなくても長期的には成果が上がる可能性は十分あります。そのため、短期的な目標だけにとらわれるのではなく、長期的な視点から効果を検証するという姿勢も忘れてはいけません。
7. 生産管理は「GrowOne 生産SR」で一元管理
「GrowOne 生産SR」は、製造プロセス全体を統合し、リアルタイムでデータを共有・管理するための総合的なソリューションです。
製造業において、労働生産性・デジタル競争力を向上させ、迅速かつ効果的な意思決定を支援します。
GrowOne 生産SRは、営業にも、設計にも、製造現場にも便利な機能を搭載しており、以下のようなメリットを得られます。
・見積時点の設計情報から、実施設計及び製造時における製造情報、納入後の保守情報まで、ワンストップで管理できる。
・設計段階で製品や部品の流用化、標準化を行う設計により、リスクの高い新規部品の発注を抑え、コスト/納期/品質面で安定した部品が調達できるようになる。
それにより、設計業務の省力化、材料費などの原価の低減、納期の短縮、品質の安定化を図れます。
生産管理システムを導入することを検討している方は、ぜひGrowOne 生産SRをご検討ください。
8. おわりに
製造業はものづくり大国日本の産業的根幹を担い、経済的成長を支えてきました。しかし、製造業は大きな転換期を迎えており、新たな事業のありかたを模索・実装していくDX化が大きな課題です。また、労働力不足や技術の継承、競争の激化、エネルギーコストの増大、国際的なESG基準や温暖化対策目標への対応など、抱える問題は少なくありません。ご紹介した事例も参考に自社の課題を抽出し、システムの導入など課題解決の糸口を検討してみてはいかがでしょうか。